【体験談】あなたは粉飾している企業にお金を貸しますか?【メガバンクの日常】

メガバンク

こんにちは、たこすです。

本日は僕の体験談のお話です。

これは実際に僕がメガバンカーの営業マンとして働いているときに起こったことに基づいて書いてます(※少し実話から変えてます)。

こういった経験は少なくとも銀行で営業していれば必ず直面する問題だと思うので、就活している学生さんには是非こういう汚い世界も知って欲しいです。

登場人物

ぼく

都内の支店に配属されたメガバンク営業マン。今年で3年目。1年のOJTを経て2年目から営業マンデビュー。

パワハラ支店長

高圧的なメガバンク支店長。数字至上主義。持ち前のパワハラで部下をしたがえ、前の支店では営業評価Sランク。4月からぼくがいる支店に異動してきた。

A社

某アパレル系専門商社。中小企業だが20年以上事業を継続。取引先は大手のアパレル企業。あまり財務状態は良くなく、会うたびに貸してくれ!と言ってくる。

中小企業は大体ちょっとした粉飾をしている

意外かもしれませんが、中小企業は多かれ少なかれ粉飾をしてます。銀行員は格付けを通じて本当の企業の価値を見極めた上でお金を貸しています。これを与信判断といいます。

A社は昔から粉飾していた

ぼくの担当先のA社も粉飾をしていました。過去の資料を見ると少なくとも5年以上粉飾をしていたと思います。

A社の粉飾

A社は長期滞留債権をずっと流動資産に計上していました。図にするとこんな感じ。

長期滞留債権とは

債権(売掛金)とはいわゆる後払いのことで、企業は物を売ると売った代金はその都度ではなく1ヶ月分をまとめて回収します。

通常、債権(売掛金)は業種にもよりますが長くても6ヶ月程度で回収できます。

長期滞留債権とは本来ならすぐに回収できる売上金が全く入ってこないことを意味します。

長期滞留債権があるとどうなるか

簡単に言うとお金が足りなくなります。本来なら来月に入ってくるお金が入らない中で新しく物を仕入れて売らなければならないので事業が継続出来なくなります。

A社の格付けは要注意先(貸してはいけない先)

A社は長期滞留債権が大きく、銀行の格付けで要注意先でした。ですので、お金を貸すことに関しては消極的でした。

要注意先にお金を貸すには審査本部の承認が必要で支店長だけの判断ではできないんです。

事件! システム変更でA社が正常先(貸してもいい先)に

そんな中、事件がありました。銀行の格付けシステムが自動計算型に変更されて長期滞留債権を認識しなくなり、なんとA社が粉飾してるにも関わらず正常先(貸してもいい先)になったのです。

パワハラ支店長の命令

A社が正常先になってからの支店長の動きは早かった。ぼくに対してA社に対してお金を貸すように指示して来たのです。

パワハラ支店長「A社はルール上正常先になったのだから、貸さない手はない。すぐに長期でお金を貸すんだ!!!これでお前も貸出残高の目標が達成できるだろう?」

ぼくの選択

ぼくは貸さないことを選択しました。

ぼく「嫌です。システム上正常先になってもA社が粉飾している事実は変わりません。ぼくはそんな先に貸したくないです!」

パワハラ支店長の選択

パワハラ支店長「そうか、分かった。じゃあ担当者変えるわ」

僕はA社の担当者から外されました。支店長に従順な先輩が担当者に変わりました。

結果

A社には期間5年の貸出が実行されました。担当者がぼくから先輩に変わってわずか1週間後の出来事でした。

それから半年後

それから半年後、A社は大口の取引先がいなくなった影響で売上が激減し、赤字になりました。その結果、新しいシステム上でも要注意先に戻ってしまいました

その結果、先輩が貸したお金は銀行のルール上評価されない貸出金になってしまうどころか、焦げ付く可能性も高くなりむしろ回収しなければならない貸出金になってしまいました。

今のぼくならどうするか

今のぼくが同じシチュエーションに直面したらどうするか考えてみました。

今ならぼくは貸したと思います。ただし、社長と対話し、粉飾を認めさせ、貸した後にどのように返してもらえるか資金の計画を作成させ審査本部を説得します。

当時のぼくは取引先と真摯に向き合ってなかったなと思います。要注意先と言うだけで遠ざけてた部分もあったことは事実です。

これから銀行員になる人へ

ぼくは当時銀行員としては半熟でしたが、大事なことはお客さんとちゃんと向き合うことです。

目標とか、支店長からの指示とか、そんなことよりもお客さんがどうしたいか、それを実現するために僕らは何ができるのか自分なりに考えることが大事です。

これが出来なくなったら銀行の営業マンは本当に要らなくなってしまうと思います。

タイトルとURLをコピーしました